アレックスのお父さんが埋葬されている墓地に、毎日通ってくるおじいさんがいます。
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小さくない墓地だし、普通、墓地で見知らぬ人と話をしたりしないから、
誰かと顔見知りになったりしないんだけど、そのおじいさんは、別。
毎日、といっても、あたしたちが毎日行かないので、正確には、あたしたちの行く日は毎日。
そのおじいさんは、とあるお墓の前に、椅子をおいて座っています。
いつ行っても、何時に行っても、かならずそこにいる。
きっと、誰か、とっても大切な人をなくされたのね・・・
今から7年も前になるけど、
アレックスのお母さんが大手術をしたことがあって。
今ではすっかり治ったんだけど・・・
で、その時に、お母さんが
「わたし、もうだめかもしれない。でも、お墓にはいるのなんて、怖い」
って言ったんだって。
そしたらお父さんが
「そうか・・・・。
だったら、きみがお墓に入ったら、
俺は、毎日君のお墓の前に座っていてあげる。
毛布を持って来て、一日中。
朝も、昼も、夜も。
家になんか帰るもんか。
だって、夜が一番怖いだろ?」
って言ったそうです。
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・・・・それで。
その、墓地に通ってくるおじいさんも、きっと、愛する奥さんをなくされたんだ
ろう、と思ってみるわけです。
なんだか、失礼な気がして、お墓の墓碑銘は見たことがないんだけど。
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そのお墓は、高価なお花で飾られているわけでもなく、
成金趣味の天使やキリストの像が立っているわけでもないんだけど、
きっと、どこの誰のお墓よりもぴかぴかに磨かれていて、
きっと地上のどこよりも天国に近い、と思う。
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そんなことを思いながら、アレックスと、アレックスのお母さんと手をつないで、
お父さんのお墓にお参りに行っています。
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