コンタクトレンズにまで、オーダーメイド精神を発揮するというのは、私の想像をこえていたけど、考えてみれば、目なんて一番使う感覚器官で、繊細な部分なのだから、
「あなたの目にぴったり合ったものを作りましょう」というのも、わからないでもない。
コンタクトがなくなったとつぶやいたあたしに、友人が友人のさらに友人を紹介してくれた。
コンタクト専門眼科医だ。
イタリアは、基本的には医療費は無料だ。だから、公共の眼科医にかかれば、白内障の手術も、コンタクトの処方箋もタダ。(すばらしい!)
その誘惑を振り切って、わざわざプライベートの開業医に行くとなると、紹介状とともに、それなりの出費の覚悟が必要だ。だから、私とアレックスは、はりきっていい服を着て、ちょっと気合を入れて、お金持ちに「見える」ようにしてから行った。
高級アパートの、高さ3mはある一枚板の木のドア。
アパートの石の壁に埋め込まれているピカピカの金の板にずらーっと並んだインターホンをしらべて、「ドクター○○」を見つけ、ピンポーン、とやると、応答があったあと、ガチャリ、と重々しくドアが開く。
看板も何もなし。外にも目印は全くないので、街を歩いていても、どこに医者があるのか、わからないのがイタリア。
眼科の診察は、世界各国、どこも大体同じで、問診して視力を測る。
このコンタクト専門眼科で唯一ちがっていたのは、眼球の詳しいデータをあれこれ 取ったこと。見たことのない、NASAにでもあるんじゃないかという巨大な機械に頭をつっこまされて、目をきょろきょろさせられ、眼球の大きさだの、目の カーブだの、乱視の方向だのいろいろ調べられた。
そののち、コンタクトの処方箋ができ、お会計へとすすむ。
「診療費にくわえて、コンタクトは片目が250ユーロになります。半年たったらまた作り直しますから。」
片目で3万円超?!
半年で作り直し?
冗談でしょ! 「また、完全・オーダーメイドですので、できあがるまで、お時間がかかります。2ヶ月ほど。」
あたしは、来週の分がほしいのだ!2ヶ月も待ってられるか。
そうなんです、何かにつけて、信じられないくらい時間がかかるのもイタリア。
オーダーメイドの商品なんてなおのこと・・・。
「うちは、サッカー選手や著名人の方々にそりゃーもう、ごひいきにしてもらってて・・・」
あたし、そんな人たちとご一緒の料金払わなくていいです。
かくして、私は、気張っておしゃれをして来た貧乏人の気分を味わい、処方箋だけもらって、そのへんのスーパーのコンタクト屋に行きました。とさ。
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