2/28/2011

賽の河原の金属探知機 前編

写真素材 PIXTA
恐山の三途の川 (c) nagareshita写真素材 PIXTA
空港のなかには幾つもの難所がある。

たとえば外国へ到着してすぐにゾロゾロ連行されていく、入国のパスポートコントロール。

ここでの「英語での個人審問」は、閻魔様クラスの最難関だといえる。

だいたいにおいて、聴衆のまえでプライベートな質問に答えるなんて、人権侵害じゃなかろうかと常々思う。

それも英語でなんてとんでもない。

自慢じゃないが、高校では物理と数学に次いで苦手科目だったので、英語の授業中は、友達に手紙を回したり、
(当時は携帯はなかったのだ!ポケベルがせいぜいだった)
ノートの隅っこにパラパラマンガを書いたり、かっこいい○○くんについてあれこれ夢想していたくらいだ。
ようやく苦行から解放されたというのに、今さら教壇の前に立って英語で質問されるのは、悪夢のなかでだって嫌だ。

思えば、高校2年のときの英語教師は、閻魔様のような顔をしていたのだった・・・(女性だったが)


一方、まだ出国する前、飛行機に乗る以前の金属探知機は、さながら三途の川の手前にある「賽の河原」だろうか。
全身をスキャンされて、持ち物と罪(この場合は金属だが)が、洗いざらいベルトコンベアーに並べられていく。便利なことに、近代化がすすんだ現代においては、X線と金属探知機によって量刑が行われるようになった。

内ポケットにこっそり罪をかくしていても、金属探知機を欺くことはできない。

「ピーーーーー!」の音とともに鬼(係員)がギロリとこちらを向く。
自分には罪はないはずなのに、「ピー」とやられると、罪人の極印をおされる仕組み。
そのショックは相当だ。なにしろ列の後ろからの視線も痛い。

何度も白枠の金属探知機の下を行ったり来たりさせられて、そのたびに「ピーーーー!」

いったい全体、なにがいけないのかわからない。
ベルト。時計。小銭。ブーツの金具。

「ブーツ脱いで」と言われて、長時間はいていたブーツからしっとり湿った足を出し、刺激臭が拡散しないよう祈る。靴下に穴があいている人を見つけて、ほっとする。
 
それを無事過ぎても、個人的に金属探知機をかけ直されることまである。
無作為に「こっち来い」と鬼に呼び出され、先端の丸いスキャナーで腕から足の先までスキャンされる。ボディーチェックだ。

その間、自分にはわからない言語で、鬼たち(係官だってば!)が冗談をとばしていたりする。これは恐怖心をあおるしかけだ・・・

さて。
場所はドイツのミュンヘン国際空港。

外国出張が初めてで緊張している気の毒なイタリア人デニスくん(26歳)は、その日金属探知機のあとのボディーチェックにひっかかった。

緊張していたデニスくんは、うっかりと、できるはずの英語をポケットから出し、財布と一緒にベルトコンベアに載せてしまっていた。

次回に続きます。

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2/24/2011

金魚親子の涙の対面

春になって水もぬるんだところで、
お休みしていた「きんぎょ騒動」のつづきを再開します。


いえね、時間を縮めて日々更新してもよかったんですが・・・
なんとなく、真冬に「春になりました〜〜!」って書くのもどうかと思いまして・・・ブツブツ。

 これまでのきんぎょ騒動は・・・

 金魚続報 |金魚の成長 |金魚とタニシの小宇宙 |

 でお送りしています。


イギリスの寒い冬を倉庫の中に引っ越した水槽で過ごした金魚の親子たち。


フレーク状のエサと、たまにミジンコを食べて、金魚たちは、すこしずつ成長していきました。

さて。

子金魚が親の口の大きさよりだいぶ大きくなったところで
 一度やってみたかったことをついに実行しました。

というのは、親子の競泳です! 
子金魚は、まだフナのような茶色をしています。
友人から譲り受けた40l入り水槽に赤い親金魚を2匹泳がせていたところに、
ドキドキしながら子金魚を入れてみました。

もちろん、温度をきっちり合わせてからですよ。

(子金魚と水槽の水とをビニール袋に入れて、親金魚の水槽の水に浮かせておくと、2時間くらいして両方の水温が一致します。そこで子金魚を放す)

温度を合わせている間、透明なビニール袋に入った子金魚を珍しがって、
親金魚が寄ってきていました。
子金魚も、大きな赤い奴が寄ってくるので、ちょっとびっくり。

でも、つついたり逃げたりという大騒動にはなりませんでした。

もしかして、やっぱり親子、わかり合っているのか?
ヽ(*⌒∇⌒*)ノ::・'°☆

これは・・・いけるかも!? 
初めての感動の競泳なるか!?

ドキドキしながら、子金魚をそうっと、水の中に放します・・・・

するすると泳ぎ出て・・・
初めて親子が対面しました。これは入れた直後の写真。



子金魚:  (;° ロ°) ナンジャコリャ 巨大な赤い魚を認識

親金魚: 接触しないように、距離を保つ w(°o°)w おおっ!!変なのがきた
 
子金魚: 浮上する (((((^ ^)サササ

親金魚: スススッ (;・ ・))))))))))))) 下に沈む 

(解説)金魚のヒエラルキー=序列では、強い者が下や大きな隠れ家、弱い金魚は水面近く/水流の悪いところ、と決まっているようですね

子金魚: 仲間を見つけ、集団になる 
     ヽ(´Д`)人(´Д`)人(´Д`)人(´Д`)ノ〜よかった〜♪

親金魚: 2匹くっついて様子をうかがう 
     ヽ( ^ー^)人(^ー^ )丿ほっ

つまり

あんまり感動のご対面じゃなかった。


そのうち親金魚は子金魚を無視して泳ぎ始めました。
子金魚は、集団を崩さず、固まりのまま移動しているようでした。

ま、しょうがないですよね、それとは知らず、兄弟も我が子もうっかり食べてしまう金魚の性(さが)・・・。

でも、よく観察していると、
兄弟同士はちゃんとお互い認識しあっているということ、親は子供をいじめたりはしないこと、がわかりました。


いや、もしかして、涙を流して対面を喜んでいたんだけど、
あいにく水中で涙が見えなかったとか・・・?

「ねえ、魚が喋れないのって、何でか知ってる?」
「知らない」
口に水入れたまま、喋れないでしょ!」 (イタリア人の友人のジョーク)


子金魚が中央で集団をつくっています。親は無関心。
失礼しました(笑)。

下のプラスチック水槽の右下隅っこにいるメダカみたいなのは、まだ小さくて親と泳げない10月生まれの子金魚。体調3cmくらい。(見えないかなぁ?)グレーの物体は濾過装置です。


このころ、子金魚は10匹生き残っていました。(2011年2月現在、4匹)
卵が1000個くらいあったんだから、ずいぶん低い確率でしたね・・・
さあ、春になって、金魚親子を外の睡蓮鉢に出したところで、ひとつ目のアクシデントが起こるのです・・・。

つづく。

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2/21/2011

ずるい、は褒め言葉

タリアのでたらめさときたら、忌々しいを通り越して、いっそ清々しい。

この境地に達するまでには、何年もかかった。
虫カゴのカタツムリが、角を伸ばすたびにガキンチョにつつかれるのに耐えるような、長い長い辛抱が必要だった。

その間、失望と絶望を何度も味わい、心が癒えて新たに希望がうまれ、ようやく展望が開けるようになってきたところなのである。


えば、先にイギリスの田舎に住んでいたのは運がよかった。忍耐力を高めるための、ちょうどよいウォーミングアップだったからだ。

厳冬のさなかに暖房装置が故障し、同日に来るはずの修理を2週間待ったのはイギリスでのことだった。
その担当者が何度めかの電話で「死去した」ことも懐かしい。

こうした苦労があったおかげで、今、イタリアの無秩序にすら筋が通って見えてくる気がするから、人生なにが幸いするかわからない。

ベネチアなのにナポリ民謡を歌うゴンドラ
  • 財布の盗難届けを出すために、警察4軒をたらい回しにされる。
  • 弁護士が書類をなくす。法廷に1時間遅刻する。
  • 医者が処方ミスをする。故意に病名を隠匿する。
  • サッカーのゴール前にくると、必ずぶつかられたふりをして転んでみせる。
  • 修理をしたと見せかけて、実はしない。 
    • 長い列を待てない輩が、一番前に堂々と割込む。
    • 信号機がときどき間違うので事故が起こる。


    イタリア人が列をつくる例外は、ジェラート屋だけ


    皆さん、これでは無法地帯、まさに弱肉強食のジャングル、自分の神経では耐えられないとお思いだろう。

    しかし、自分が被害者でなく、逆の立場だったらどうだろう。

    誰かに仕事を押し付けても、遅刻しても、ミスしても、
    ひとを騙して業務成績をあげても、列をぬかしてズルしても、許されるのですよ?

    日ではなくても、人間つらい時には、「このくらい許されるとどんなにラクか」という瞬間がある。
    イタリアでは年中それが許されているのだ!

    だったら自分もお願いします!と人々が右に倣えをするのも無理はなかろう・・・・
    (; ̄д ̄)ハァ↓↓

    亀の忍耐が必要です・・・

    ビアージというイタリア人ジャーナリストが言った。

    「形容詞『furbo (ずる賢い)』は、フランス語では人を侮辱する言葉だが、
    イタリア語ではほめ言葉になりうる」と。

    つまり、ずる賢い=人をまんまと出し抜く器量がある、という意味だ。

    そして確かにイタリア人は、悪名高き首相ベルルスコーニ氏のようにずる賢くなってお金持ちになりたいと望んでいる節がある。(彼の支持率がなかなか落ちないのは、このせいだとあたしは睨んでいる。)

    こうなると事態は悪化の一途をたどる。

    善良な民に生きるすべはあるのか?

    もっともっとずる賢くなる以外にない。

    何しろ、「狡猾な人を見分けるには、1.5人分狡猾になれ」という諺だってある。
    (ということは、弁護士に会う前に、弁護士より博識になければならないということだ。)


    狼に食われる前に、逃げるが勝ち

    そんなの、無理だ〜!
    だから、手っ取り早いのは、こっちだ。

    「信用するのは良いこと、信用しないのはもっと良いこと」


    イタリアでは信号機すら、信用してはならない。


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    2/18/2011

    ラリーとモリーとチェシャキャット

    「・・・・なんかモリーナ、いつも笑ってない?」

    うちの妹は、あたしんちの猫、モリーナを見るとそういいます。
    あたしは飼い主だからして、モリーナを見慣れているので、ちっとも笑っている風には見えないんだけど、

    ねむいの
    「モリー、今日も笑ってるね」と妹。

    「どの辺が?」
    「目が笑ってる。ニヤリしてる。
    口元もなんかスマイリー。」

    どうですか?

    ワタシはランカシャー生まれです











    話はちょっととんで、イギリスの首相官邸にネズミがでるっていうんで、
    助っ人にと貰われてきた、ネコのラリーくん。
    ニュース、ご覧になりましたか?

    うちの妹がスカイプ越しに
    「ねえ、テレビみた!?ダウニング・ストリート10番地のネコ!?」


    見たよ〜!
    なんでも、もとは雑種の野良ネコだったんだってね!4歳らしいね。
    ネズミ穫りそうな立派な顔だよね〜!

    まだ、ご覧になってない方に。
    こちらが、イギリス首相官邸の猫、ラリーくんです。
    画像 http://periscopepost.com 「ラリー、レポーターを引っかく」






    どうです?



    なんか・・・こう・・・
    デ・ジャ・ブを感じませんか?



    そうなんです、なんか、似てるんです、この2人(匹)。
    イギリス生まれなので、同じなのかな・・・?
    妹いわく
    「ラリーも笑ってるしw」


    イギリスの猫といえばブリティッシュ・ショートヘアという種類が有名ですが
    それも、こんな顔。
    http://auction.jp.msn.com/item/134225207

    もともと、イギリスの家庭猫が改良されてこんなになったそうなので、
    ブリティッシュショートヘアは、ラリーくんやモリーナとルーツが同じなわけですね。

    で、話は、「モリーナ、いつも笑ってる」ところに戻るわけです。

    画像 www.screencrave.comより
    この猫、「不思議の国のアリス」に出てくる、チェシャキャットなんですが。

    ・・・ね、笑ってるでしょ。

    不思議の国のアリスって、イギリスが舞台のお話なんですよね。
    ほら、赤白のバラ戦争がモチーフになってたり、ティーパーティーがあったり。
    思い出しました?

    このチェシャキャット、英語の慣用句「チェシャーの猫のようににやにや笑う」“grin like a Cheshire cat” というのからアイデアを得たキャラクターらしいんですが。

    なぜ、チェシャキャットが「ニヤニヤ笑う」かについては諸説ありまして。
    (以下wikipediaより)


    (1)酪農が盛んなチェシャー地方には有名なチェシャー・チーズを はじめとする酪農製品が豊富にあり、ミルクやクリームが好きな猫にとっては好物がたくさんあるからついニコニコするため 
    (2)チェシャー・チーズに集 まってくるネズミを捕まえてご満悦であるため 
    (3)チェシャー・チーズが猫の形に作られていたため 
    (4)当地方の有力な一族の紋章のライオンが、笑う 猫に似ていたため、などが挙げられる

    ってことなんですが、
     あたし、どの説も推しません。だってあたしの予想は、こうだから。

    チェシャーあたりの猫、イギリス北部の猫は、笑ってるんです。
    だからチェシャキャットも笑ってるんです。

    ルイス・キャロルも、アリスの話を書く時に、
    モリーナやラリーくんみたいな猫を思い浮かべていたんじゃなかろうか、と
    モリーナの眠い顔を見ているのです。


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    2/16/2011

    シャバの飯

    写真素材 PIXTA
    これはうちの大学じゃなく「ワシントン大学」(c) とっぴん写真素材 PIXTA

    たまには、テキサスの話を。

    私はテキサスのとある大学で働いていた。広大なキャンパスの中にある小さなオフィス。毎日学生に囲まれた、楽しい日々だった。

    確か、その日は、いつも車を停めている駐車場がいっぱいだったのだと思う。

    とにかくだだっ広いテキサスでは、土地が有り余っているため、駐車場は縦にではなく、横に伸びる。

    だから端から歩くと軽く5分かかったりする。
    車内温度52℃を記録するような時期には、5分の距離を歩くのは正直辛い。

    もっと近い駐車場を探してそこをでた。

    入ろうと思った小道が一方通行だったから、手前でUターンしようと、わきのセブンイレブンのついたガソリンスタンドの駐車場に入った。

    写真素材 PIXTA
    (c) bwinds写真素材 PIXTA

    このコンビ二は24時間営業な上、大学の敷地と隣接しているので、大学生がガスを入れたりちょっとした買い物に行く所のようだ。マクドナルドも裏にある。
    キャンパス内の賑やかさが感じられる一角だった。


    コンビ二の前の駐車場をぐるっと回って、道路に戻ろうとしたときに、こわもてのおじさんがガソリンを入れながらあたしを(あたしの車を)じろじろ見ていた。

    「テキサスチェーンソー殺人」とか「大学で無差別射撃」とかタイトルのついた新聞の犯人として一面に載りそうなご面相だった。(失礼)


    あたしは能天気な日本人なので、危ない場所とか、危なそうな人とかの区別があまりつかない。それでも、その時は「こわそうなおっちゃん〜〜」と思った。
    ・・・思っただけで忘れた。

    ところが、後日、ある日本人学生からこんな話を聞いて、ちょっと認識が変わった。

    学生いわく「あのセブンイレブンとかマクドの辺、ちょっと治安がよくないんっすよ。女の人は、気をつけたほうがいいですよ」というのだ。
    ちなみに彼は関西人なのでマクド、と呼んだ。

    その学生が言うには、この大学の東のはずれに、刑務所があるのだとか。
    殺人犯を収容する施設ではないものの、軽犯罪を犯したお歴々が収容されている。

    「・・・脱走してくんの?(恐)」と聞くと、

    脱走までは「そう頻繁には」ないけれど、
    刑期を終えて正門の鉄の扉から出てきた方々が、最初にシャバの空気に触れるのが、じつはこの大学の周りということになるんだそうです。

    だから、
    「俺がマクドに行った時にね、ごっつい太い腕に刺青した、2メートルとかある、ものすげー怖い兄ちゃんがいて、『カネくれ』って言うんですよ」

    ひゃあああああ〜!

    「俺、うわ、この人、『出てきた人』だ!って思って、すっげ怖かったんで『すいません、金ないんですけど』っていったんだけど、
    そこにいた日本人の友達が、小声で『小銭だせ、小銭!』っていうんです。

    で、ポケット探って、入ってた小銭を『コレしかないんですけど』って、あげたんすよ。」

    そしたら?

    「そしたら、ども、っていって、他の人にもたかってました。」

    小銭あげたんだ〜。あたし怖くて逃げそうだわ。と言うと、

    「あ、小銭ね、財布と分けて、どっかに入れといた方がいいらしいっすよ。
    財布出すと、根こそぎもってかれるけど、
    小銭だけでもちょろっと出すと、それでもとりあえず我慢してくれるらしいんで。

    アメ人の友達が言ってました。」

    そそそ、そうなんだ・・・。あたしもしなければ・・・。

    「特に日本人なんか、カネ持ってると思われてて、しかも弱そうなんで。
    たかられやすいんですよ。
    あそこのガススタンドも危ないっすよ。気ぃつけてくださいね。
    とくに新しい車に乗ってると、危険ですよ。」

    あたし!こないだじろじろ見られてたのは、そういうことだったのね!
    (その時は、新車のフォードに乗っていた)

    写真素材 PIXTA
    (c) RAV1173写真素材 PIXTA

    「気をつけるよ・・・ありがとう、教えてくれて」
    「いいっすよ。でね、とにかくそのマックの人・・・皆からもらったお金でハンバーガー買ってました。」

    シャバに出て食べる最初のご飯が、マックのハンバーガーなんて、やっぱりアメリカンですねぇw

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    2/14/2011

    PUNTO(プント)

    うちの自動車が納入されてきました。

    来る日も来る日も、クルマ雑誌を積み上げて、メモと電卓を膝の上に乗せ、
    しあわせそうに居眠りしていたアレックス。
    写真素材 PIXTA
    (c) sanaegogo写真素材 PIXTA



    会社帰りにディーラーへ行き、10台も試乗して、結局買ったのは・・・
    見栄も恥もない、一番安かったイタリア国産、フィアットのクルマでした!

    ・・・マジですか?!
    「いいんだ、これで。小さいから駐車に困らないでしょ」
    「でもオートマじゃないからあたし運転できないよ?」
    「どうせしないでしょ、イタリア人の運転は怖いっていって」
    「でもこれ、しょぼい。恥ずかしい。」
    「いいの、緊急事態なの今は。ぼくのほしいやつは5ヶ月待ちなの。クルマないと困るでしょ。」
    「確かにアルファ、もうダメだもんね」
    「それに、これ、中古市場で一番売れてて、値下がり率が低いの。売りたい時すぐ売れていいんです。」
    「自分に言い聞かせてない?」
    「・・・ちょっとだけ」

    そんなわけで、アレックスくんの夢のクルマは夢と消え(無情なり)、
    その名もPUNTO(プント)、イタリア語で「小さな点」「ドット」「ポチ」といった意味合いの小さなクルマが9000ユーロで購入されました。

    アレックスのあたらしい彼女

    まあとにかく、このクルマ・・・ひどい。
    値段も安いが、それなりの非・装備なのだ。

    まず手始めに、オーディオがついていない。だからiPodどころかラジオすら聞けない。
    「お好きなオーディオが選べて、いいじゃないですかぁ!」
    とはディーラー。
    これで驚くなかれ、「あ、でも、この値段でエアコンはちゃんとつけますよ!」
    ディーラーさんは厳かにおっしゃいます。

    (このくそ暑いイタリアで)エアコンないとか・・・そんなクルマ、あるんですか!?」

    あたし、びっくりしてムンクの「叫び」みたいな顔しました。

    イタリアでホテルを探すと、「エアコンついてます」「カラーテレビあります」って書いてあるとこがあるんですが、それに匹敵するおもしろさでしたw

    と、まあ、あれこれあって、納車されたクルマ。
    とりあえずご機嫌で乗り込んだアレックス。
    「いいじゃないか。ぼくは気に入ったよ」
    すっかりアルファを捨てて新しい彼女に惚れてしまったようで、最近は口を開くとクルマの話しかしない(笑)

    しかしながら、このPUNTO(プント)、まだまだ知られざる秘密があった。
    リモコンがない。
    ドアのハンドルが、プラスチック。
    サイドミラーも、ホイールカバーも、給油口の蓋もプラスチック。

    さらに、
    集中ロックが運転席側しかきかない。(故障かと思いました)

    天井内部のドアの上方についている手すりがない! 一個もない!

    トランクを開けると・・・・明かりがつかない。



    ・・・もうね。あたしはすっかり、目がプント。


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    2/10/2011

    チキン

    本日の登場人物
    ロレンツォ(イタリア人) 
    リンダ(イギリス人でロレンツォの奥さん)
    アレックス 
    あたし

    ****

    リンダ   イタリア語って難しいわよねぇ。15年もやってるけど、どうにも。

    ロレンツォ 英語だって難しいじゃないか。

    あたし   がるるるる。どっちも難しいって〜!

    アレックス ピッコラは絶対、イタリア語で「卵」の複数形と「ブドウ」の単数形をまちがうんだよなw こないだも、
    「ラザニアに、ゆでブドウ(卵のまちがい)が入ってておいしかった」?
    おいしそうなラザニアw 画像 BUTTALAPASTA より

    あたし   だってぇ。紛らわしいじゃん!

    ロレンツォ ルーヴァルオヴァ? 全然似てないけど(笑)?

    あたし   すっごい似てるじゃん!そっくりだって!

    ロレンツォ はははははは

    リンダ   それはねぇ、 ブドウが、ウーヴァ(単数)—ウーヴェ(複数)って変化するのに、 卵が、ウオヴォ(単数)ーウオヴァ(複数)って不規則変化しちゃうから混乱するのよ。よくわかるわぁ。(と、うなずく)

    あたし   でしょーーーーリンダ!かくいうアレックスだって、日本語でホーホケキョ、って言えなくて100万回くらい練習したんだよ!?はははーー!

    リンダ   Hの音は、イタリア/フランス人キラーよね。

    ロレンツォ 「Hospital ホスピタル」とか「Heater ヒーター」とか。

    アレックス イタリア語にHの音がないから、発音しようとするとツバが飛ぶか、音が出ないか、どっちかだったよ。

    リンダ   ところでそれ、何なの?ホーホケ・・・? 

    あたし   鳥の鳴き声なの。春の鳥、ウグイス。

    アレックス (すねて)鳥は、ふつうに、ピーピー言ってればいいんだ。

    ロレンツォ 日本の鳥って日本語で鳴くんだね・・・(妙に感心)


    リンダ   ロレンツォはね、どうにも「チキン 」と「キッチン 」を混乱するのよね。

    あたし   ああ、それもイタリア人ぽいね。シープ(羊)とシップ(船)とか。ねー、アレックスwww

    アレックス シーーーーープ。シプ。

    3人    ははははははは!!!違う違う!

    ロレンツォ 
    僕ね、イギリスで2度目にアパートを引っ越したとき、不動産屋が良くなくて、入居した部屋がものすごく汚かったんだ。
    だから、不動産屋に文句をいいに行ったんだ。
    写真素材 PIXTA
    イギリスのキッチン(例)(c) yuko写真素材 PIXTA

    英語苦手だったから、軽くあしらわれちゃうとおもって、すごく怒ってるふりしてさ。
    でも、緊張してて・・・・。

    リンダ   若い担当の男の子に、『部屋が汚い!今すぐハウスクリーニングを入れてくれ』って迫ったのよね。それから、

    写真素材 PIXTA
    (c) しもじも写真素材 PIXTA
    ロレンツォ/リンダ 

    「どこもかしこも汚いけど、特にあの、『チキン 』はひどすぎる!」




    コケコッコーーー☆

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    2/07/2011

    泥棒に対抗して怪しい人になる

    このところ毎週末、クルマが数年来入ったことのない、うちの車庫の大掃除をしている。

    掘れば掘るほど、時代をさかのぼって過去の遺産が出現し、どれだけやっても終わりが見えない。

    まさに、これはイタリア国を象徴する情景・・・

    道路や鉄道敷設工事などで地面を掘ると、ローマ時代の未発掘の遺跡が出土する
    (そして調査がすむまで工事は中断される)のと同じだ。

    古代のロマン!と思いきや、その出土品は、そのまま捨てられて埋められてしまうものも多くあるらしい。たくさんあって処理しきれないのだ、というのが政府の言い訳。

    さて、掃除にあたり、鼻炎を患っているあたしはホコリを防ぐべく、医療用マスクを装着している。インフル流行のときに母が送ってくれたものだ。

    写真素材 PIXTA
    上、ワタクシではございません。(c) rikiishi写真素材 PIXTA

    両手には軍手、そして頭には野球帽をーーーもちろん帽子の後ろの穴からポニーテールの髪の束を出してーーーかぶる。
    そんな勇ましい(痛ましい)姿である。


    自分では、着膨れしたアレックスの姿ほどひどくはないと思っていたが、近所の
    写真素材 PIXTA
    (c) YsPhoto写真素材PIXTA
    幼い子供があたしを見かけて

    「ねえ、ママ、あのオバちゃん何してるの」

    と声をおとして怖々訊ねるほど、危険度は高いようだった。




    「そのマスクがね・・・怪しいんだよ」

    アレックスはいうが、背に腹はかえられない。
    アレルギー症状が悪化すると、息がつまって、夜も眠れないのだ。


    こうなっているのには、もちろん訳がある。例のボロアルファのかわりの車を購入することになったのだが、
    新車を家の前に駐車しておくと、一晩で盗まれてしまうため、車庫にしまわなければならないのだ。
    そのために、車庫のスペース確保から入っているわけだ。

    まめ知識*自動車購入時に車庫証明はいらない。みんな路駐をするから。

    写真素材 PIXTA
    (c) みなりん写真素材 PIXTA


    イタリアはドロボウの国だ、と一説にいわれているが、まったくもってその通りなので、
    なにかにつけて泥棒対策が必要になってくる・・・

    アレックスなら、「泥棒ももちろんいるけど、悪質ないたずらが多いんだよ」とフォローに入るだろう。

    「釘でひっかいたり、ガラス破って車内荒らししたり。」
    それも犯罪に入るから、フォローになっていないのだが。

    こういうのが10個もあった
    「窓から見える車内に買い物を出しておいたり、暗い道に駐車したり、不注意なことをしなきゃ、盗まれたりしないよ」

    子供に変質者扱いされ、むくれた顔で
    巨大な(50L入り!)ワイン貯蔵タンクやら、
    壊れたシャンデリアやらを運んでいると、アレックスはこういう。

    「そのマスクさえなきゃ、まだすごくかわいいから大丈夫。」

    くそう。思えばイタリア人なんぞにハートを盗まれた、あたしが不注意だったようだ。

    「ピッコラ、ところで、ハッピーバレンタインw」
    こりゃあ・・・安くあげられたな。

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    2/04/2011

    春の歌をきく

    霧の中をジョギングしていたら、木のこずえで一羽の小鳥が歌を歌っていました。

    ・・・こんなかわいい出だしにするなんて、キモチワルイψ(`∇´)ψ ですって? 
    失敬なwww

    それは、美しい歌をうたう春の鳥。
    真っ黒な体に黄色のくちばしをつけたブラックバードと呼ばれる鳥です。




    イタリアにもこの鳥がいるとは知らなかったけれど、イギリスではスズメやムクドリと同じくらいよく見かける小鳥なので、歌を聞いてすぐに

    「あ」「こんなところにもいるんだ・・・。」

    イギリスの早春の夜明けには、まだ真っ暗なうちから、
    家の屋根やら庭のオークの木の枝やらにとまったブラックバードが、恋の歌を歌いはじめます。
    夜明け前の静かな町に鳥たちの歌声が響きわたります。
    それをきいて「春だなあ」と何度思ったことでしょう。


    夏になるともう大変。

    庭の木、生け垣、こわれた屋根裏の穴・・・あらゆるところに巣を作るブラックバードが、朝の4時から大合唱。

    一羽一羽が異なった旋律の歌をうたうのと、
    つがいになった者たちはお互いの歌をまねるのとで、
    最初のうちは本物の鳥とは思えないほどの音量と響きでした。

    事実、(時報や教会の鐘の代わりに?)鳥の歌を拡声器で流しているのかと考えたことがあるとこっそり白状しておきます。へへへ。

    ジョギングの足を止めると、すぐに汗が冷えて指先がかじかんでしまうくらい
    しっとり冷たい空気の中、小鳥たちはもう春を感じているのだなあ、と嬉しく思いました。

    写真が撮りたくて携帯を出してみたけど、
    黒い木の幹がグレーにかすむほどの霧のむこう、ずいぶん高いところにいるらしく、小鳥の姿は見えません。

    ただ、歌だけが空から降ってきていました。


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    2/02/2011

    もしもし、保健室ですが

    日本のように決まった時期に新入社員をとるわけではないアレックスの会社だが、
    今年1月付で、新しく4人がここのオフィスに配属された。

    緊張した面持ちの新入社員たち。仕事柄、全員が男性で、中途採用だ。
    (ヨーロッパでは新卒は総合職採用がほとんど。しばらく就業経験を積むと専門職にも採用されやすい)

    4人集まって、前のオフィスはどうだった、ここのコピー機の使い勝手が悪い、などとヒソヒソいつまでもやっている。

    受入れ側の方も
    「右のは、結構いいセンいってるよね。かっこいい」
    「左端は、前はトゥールーズ(フランス)のエアバスにいたらしいよ」
    「へぇー」
    と、気になってはいるものの、まだ遠巻きにしているだけだ。
    「よっしゃ、おれが一発、友好をしめしてやろう」


    36歳、お調子者の独身男、マッシモが保健室に出かけて行った。
    「オトモダチ推進計画だ!!」
    写真素材 PIXTA
    (c) 渡り鳥太郎写真素材 PIXTA


    翌週の月曜日の朝9時。

    オフィスのなかは、妙な熱気につつまれていた。
    何も知らぬ4人が、一塊になってやってきた。


    「おはようございま〜す」

    4人とも、手にスーパーのビニール袋をぶらさげている。
    オフィスの人々は、期待に目をキラキラさせている。

    マッシモが何食わぬ顔で、
    「おう、何持ってんの?弁当か?」


    「いいえ。それが、保健室から電話があって。健康診断だってことで・・・」
    マッシモ 「なんだ?検便??」


    ルカ    「わはははは!」
    新入社員B「 (ちょっとムッとして)検尿、の方です」

    みんなニヤニヤを止められない。


    新入社員C 「朝ご飯を食べずに来てるんで、もうハラへッて辛いですよ」
    マッシモ 「そうだろう、そうだろう」


    女子社員 「あら、でも、保健室に行って置いてこなくていいの?」
    新入社員D 「それが、張り紙してあって。  【10時まで開きません】」

    オフィス中、耐えきれない失笑が広がった。

    ルカ   「で、オシッコもってオフィスに来てんの!?」
    オフィス 「わははははは!」

    新入社員 「・・・・・」

    写真素材 PIXTA
    (c) つん写真素材 PIXTA
    10時10分前に、4人はまたコップ入り/ペットボトル入り(笑)の検尿をもってオフィスを出て行った。




    マッシモとルカが後を追う。




    20分ほどして、4人と2人が一緒になって帰ってきた。



    新入社員A 「・・・みなさん、知ってたんですね?」
    社員 「知ってたよ、嘘っぱちの健康診断」
    社員 「10時まで開きません、とかすごいアイデア」
    社員 「いやー悪い悪い。楽しませてもらって」
    社員 「メシぬきで来させて悪いね〜(*1)」


    そのオフィスにいるほとんど全員(50人くらい)が、イタズラを容認して、朝のひとときを楽しんでいたらしい。 驚くのは、保健室まで参加していることだ。なにしろ電話をかけたのは、保健室の医師だったからだ!
    女子社員 「朝ご飯、どうしたの?」
    新入社員B「バールでブリオッシュ(*2)買います」

    写真素材 PIXTA
    (c) KAZUMI写真素材 PIXTA 
    マッシモ 「俺がコーヒーおごってやるよ」
    ルカ 「砂糖はおれがおごってやるよ」
    女子社員 「砂糖は無料です!」
    新入社員C 「あの、俺、クリスチャンっていいます。」
    女子社員 「どうも。私、ソフィアです」



    次の新入りには、どうやってイタズラしようか、もう計画を練っているということだ。


    *1 
    イタリアでは検尿のときは、「朝ご飯を食べてはならない」といわれるため
    (でも医学的にあまり意味はないはずだ)
    お腹をすかせているところを想像するのが、また、楽しいのだそうだ。
    *2 
    イタリア人の朝ご飯は、カフェラッテと甘いパン(ジャム入りクロワッサン、デニッシュパンなど)が主流。もちろん10時くらいにお腹がすくので、そこでまた何かつまむ。

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