4/13/2011

ストリートガール ②

前回 ストリートガール①からの続きです。

photo by daniel nicholson

何十メートルか間隔を空けて並ぶ数人の女性たち。

長い髪をかきあげ、側を通る車に視線を投げかける。

意外や意外、年齢も国籍もまちまちで、
 東欧系の20歳そこそこの金髪女性がいるかと思えば、あたしよりはあたしの母に近いくらいの南米系女性もいる。

 ほかにアフリカ系、ぽっちゃり系と、顧客の嗜好を反映して様々な女性がいる。

彼女らの仕事は、そこに立って客を引き、取引が成立すれば客の自動車に同乗して営業に向かうことである。


彼女らの相場など、あたしの周囲の人間は知らないというが(知っていても言わないだろう)
アレックスは、うーん2時間50ユーロくらいじゃない? でもそんなの知らないよ、
と答えた。マクドナルドの時給が 7.5Euro だというから、自分を売るにしてはずいぶん安いものだ。 
もちろん、その半分かそれ以上は、元締めの懐に入る。

彼女らはグループに属しており、いちどきに数人、担当者の車で運ばれてくる。そして場所を与えられる。

たとえば、公園を囲む5本の道には、それぞれ縄張りがある。
南米系を揃えた道と、金髪女性が立つ道では当然元締めも異なる。
他人の道で商売をしてはならないのだ。

数時間しても客のつかない場合や、警察がパトロールしているという情報が入った時は、公園に引っ込むか、また車で回収されてゆく。


Abitare A Roma www.abitarearoma.net

彼女らは、与えられたその場を離れてはいけない。
数十メートル隣の同業者と身振りで話をするのも禁じられている。
携帯で話すのは禁止事項ではない、なぜならお客や監視員が連絡を入れてくることがあるから電話はいつでもONなのだ。

それにかこつけて、女友達と笑いながら話し込んでいる姿もよく目にする。
子供と話している母親だっている。
彼女らにも、私生活があるのだ。

写真素材 PIXTA
(c) 阿野陽写真素材 PIXTA

なにかの理由でその場を少しでも離れると、即座に監視員から電話が入る。
 
どこかから常に、監視されているのだ。

そういえば、道の反対側がちょっとした丘になっていて、そこの上の柵にもたれて、空を見つめている野球帽の男がいる。
彼女らが立つ日には、必ずいる。
だから、それが監視員だろうと私はにらんでいる。


また、同じ道を何度も何度も往復するスクーターの男がいる。この男も監視員だ。

写真を撮りたい、と思ってジョギングの足を緩めて携帯を取出す。
監視員も女性たちも、私に気づいていない。

携帯を構えていると、 すぐ側の木の陰から
犬の散歩をさせている濃い色のサングラスをかけた70すぎの老人が現れた。
私をサングラス越しに凝視している。

威嚇されたと感じて鳥肌がたった。こんな老人までが、ストリートガールの監視員だったのだ!

1年間、観察を続けた結果、1グループのストリートガールにつき、必ず2人が監視をしていることに、私は気がついた。
一人は女性たちに付きっきり、もう一人は遠くから監視しているのだ!

私はそれ以来、写真を撮ろうとするのを止めた。
彼女らは、歩道という棚に並んだ商品、逃げ出しはしないか、客とのトラブルはないか、監視する必要があるのだ。
それを阻む者に報復があるのは、間違いのないところだろう。

ストリートガール。車の陰のベンチに監視員がいて話をしている。

また、一台の車が止まった。
日曜午後4時である。

しばしの値段交渉のあと、その20代前半の背の低い黒人女性は、助手席に乗り込んだ。
運転席には30代とおぼしき黒人男性。サングラスをしている。
車は左に方向指示器を出して、その場を離れた。市内中心部へ向かう道を選んで走り出した。
夜はまだ、始まってもいない。


Go back to TOP
当ブログは各種ブログランキングに非参加ですが本文下の「おもしろい」にクリックを頂くととっても励みになります!   もしくは「おきてがみ」か「あし@」にクリックをどうぞよろしくお願いします

16 件のコメント:

  1. ケンケン13/4/11

    男性は幾らかを知っています!
    で~も、口を割る事はないでしょうね(*≧m≦*)ププッ
    50ユーロっすかぁ。
    安いっすよねぇ~ ̄m ̄ ふふ
    行こうかなぁ~
    イタリーへ!ヽ(´▽`)/へへっ

    返信削除
  2. こんなカッコしてて、お風邪を召さない
    強くたくましい身体になられるのですね

    その勢いでビョウキにもならなければいいですね^^

    返信削除
  3. 小説ではよく知る世界です。
    でも……現実にあるのだと思うと、
    つらくて恐ろしいですね。
    piccolaさんも、トラブルに巻き込まれないよう
    気をつけてくださいね! 

    返信削除
  4. う〜ん。夜の闇のにおい。ディープですね。

    返信削除
  5. そういえば昔、よく監視員させられたなぁ…
    勤務時間は長いし、みんな言うこと聞いてくれないし、
    大変だった。 とは言っても危険な匂いのする
    イタリアの路上ではありませんよ。プールの監視員です。

    返信削除
  6. 危険な仕事ですね、よく考えると。見ず知らずの人と個室に入る仕事。これほど女にとって命がけの仕事はないですね。
    彼女達の筋肉質のスタイルは格好いいですが。

    イタリアの売春もマフィアが背後にいるのでしょう?
    ここパースでも、実はイタリア系マフィアがはびこっているようなのです。町にはマフィアが経営する店などもあるようで、トラブルがない時は何もなくていいのですが、とにかく気をつけています。

    2年前にクリーニング屋の店先で私と大げんかした経営者がイタリア系のマフィアではないかと義父が言ったとき、後で考えてぞっとしました。

    返信削除
  7. ケンケンさん

    >行こうかな
    そうおっしゃるだろうというのは、想像していました・・・
    >幾ら
    皆、きっとこっそりと知っているんでしょうね。これだから、男は・・・!

    と言われても、しょうがないでしょ?

    返信削除
  8. FREUDEさん

    >風邪
    私もその反応をしました(笑)
    冬でも超ミニで胸まで出して、本当に寒そうな格好だったりして・・・。

    麻薬づけなんじゃないかと、そっちも心配ですね。。。
    いつか、自由になれる(?)日がくるんでしょうか?

    返信削除
  9. fullpotさん

    ジョギングしているだけのことで、
    ずいぶん彼女らについて詳しくなってしまいました。

    1年も観察していると、電話で話しているのが聞こえたり、
    何度も見る顔もあったりして、(でも2度と会わない時の方が多い!どのくらいの人数がいるんだろう・・・?)
    なんだか、他人事ではない気がしてきます。

    これ以上深入りはできないので、観察はひとまずここまで。
    彼女らの幸運を祈ることしかできないんですよね、あたしには。

    返信削除
  10. コウスケさん

    真っ昼間にも闇の匂いを持ち込みますね。
    裏にはそれこそマフィアも絡んでいるだろうし。

    彼女らが納得してこの仕事をしているならまだしも、
    きっとトラブルに巻き込まれて否応もなしにしている子だっているはず。
    一個人では救ってあげることができないもどかしさを感じます。

    返信削除
  11. まさしさん

    ええっ? w( ̄Д ̄;)w

    びっくりするじゃないですか(爆笑)

    ほのぼのとしたプールの監視員でしたか・・・w
    「そこ!プールサイドは走らない!」とか
    「プールから上がって体操してください〜!」とかいうやつですねw 
    最後まであがらなかったガキンチョは、きっとあたしです。

    あれ、確かまさしさんは、銭湯で無敵のオバチャンたちに突撃されたこともおありだったような・・・。ぷぷぷw

    返信削除
  12. Rumikoさん

    マフィア、もちろんいます。
    普段はまったく気がつきませんが。

    おそらくストリートガールを掌握しているのもマフィアでしょうが、この値段では利益はそう多くないでしょうから、その背後の人身売買とか、麻薬取引なんかを目当てに管理しているのでしょうね。

    おっしゃるとおり、普段生活している分には、姿は見えませんので心配することはありません。ただし、一歩トラブルに巻き込まれると、突然姿を現すのがマフィア。

    Rumikoさんも、何事もなくて済んでよかったですねぇ。
    それにしても、
    おっちゃんと大げんかするRumikoさん・・・(笑)

    そのエピソード、今度教えてくださいなwww

    返信削除
  13. 子供と話している人もいるとなると、少し悲しみも感じてしまいますが、その女性も子供を育てるためにしている仕事でしょうね。
    しっかりと監視している人がいるという事実、脅威でもあるけれど、トラブルから彼女達を守る存在でもあるのでしょうね。

    返信削除
  14. おぉー。。
    なんかスパイっぽくて格好良い。。笑
    でも、なんか危なそうですね?
    Piccolaさんの身に危険が迫らない程度に楽しんで下さいませ(•—•)_
    久しぶりの投稿でした。w

    返信削除
  15. 桃源児さん

    おっしゃるとおりですねぇ。
    自分の恐怖が先立って、監視員は彼女らを守る存在、というところに気づいていませんでした。確かに、保護が必要ですよ、彼女らには。

    それに、傍目には悲しい存在のように思えますが、本人が悲しいかどうかはわかりませんしね。ちょっとナイーブな内容でしたね(笑)
    しかし、同性としてどうしても身につまされるんだなあ・・・・。

    返信削除
  16. たげしさん

    スパイ(笑)!そうそう、たしかにちょっと潜入捜査官っぽい気分だったかもしれないです。
    ともかく、これ以上深入りするのは止めたので、ひとまずここまで〜。

    お忙しいでしょ。コメント、気になさらなくても大丈夫ですよw
    たま〜に遊びにいらしてくださるだけで、喜びます。

    返信削除