うちの猫はモリーナといって、イタリア語で「やわらかくてふにゃふにゃ」という意味です。 だんなのアレックスがつけました。女の子です。
これはまだイギリスに住んでいたころのモリーナとの出会いのお話です・・・
その日、私が夕飯の支度をしていると、車のエンジン音と革靴で歩く足音につづいて、いつものタイミングでドアをノックする音がしました。
その家の裏口は、綺麗なスカイブルーのドアで、上半分がすりガラスになっているところに姿が透けて見えます。
古いスタイルの前方後円墳形の鍵穴にささった扉の鍵束。
がちゃがちゃいわせながらドアをあけると、アレックスは、
「ちょっと買い物に行ってきたんだけど、重いから手をかしてよ」
と言いました。
私はちょうどネギを刻んでいるところだったし、それ以前に靴を履いて出るのがめんどうだったので、「え〜〜。」
不満げに「なに〜?」
ダメ押しで「やだよ〜」と言ってみました。
そういいつつも、サンダルを履き、手をそのへんでふいて外に出ました。
外はイギリス北部の夏の常で、午後7時半なのにまだ夕焼けにはほど遠い明るさでした。
海に近いところなので風がいつもふいていました。
屋根のてっぺんにあるテレビのアンテナの上には、かもめがとまっている・・・そんな赤レンガ造りの家です。
裏口のドアと同じスカイブルーがぬってある車庫のシャッターの前には、赤のアルファロメオ、当時のだんなの愛車「トリノのプライド」とやらが、いつもと同じようにとまっています。
「そんで。なに買ってきたの?」
車のドアに手をかけたところで、声が裏返りました。
後部座席に、生き物が入っているとおぼしき、赤いプラスチックのケージがあったからです。
「サプラーイズ!」とアレックスは英語でおどけました。
モリーナがうちにやってきました。
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